大判例

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大分地方裁判所 昭和32年(ワ)220号 判決

本件は初め津末弥栄が、被告脇谷友市、佐藤シゲ、佐藤友長、飛田益男の四名を相手方として提起したものであるが、その後、中村周作が当事者参加をなし、津末は脱退したものであつて、当事者参加人中村及び被告脇谷らの主張の要旨は次のとおりである。

中村の主張

被告飛田は本件の宅地と地上建物とを所有していたが、この建物には訴外信用金庫のために抵当権を設定しておいた。そして、この抵当権実行により脱退原告津末が昭和三一年七月九日競落し、昭和三一年八月八日代金支払を了し、同年九月八日登記を完了した。ところが、同年九月四日本件宅地をA・Bの二筆に分筆し、そして、A宅地について被告脇谷のために同日地上権を設定し登記手続を了した。しかし、脱退原告は競落により法定地上権を取得したのであつて、その範囲は本件宅地を東西に区劃する土塀の北側部分であるべきところ、被告飛田の設定した地上権は、右土塀の南側及び北側のうち土塀より約二米半ないし八米離れた本件家屋の軒下までに至るA宅地全部である。そこで脱退原告より本件家屋を昭和三二年六月二七日買受け登記を経、法定地上権を譲受けた当事者参加人は右被告両名に対し法定地上権がA宅地中土塀の北側部分に存することの確認を求め、被告脇谷に対しては、その地上権取得登記が法定地上権を侵害するから抹消を求める。被告佐藤両名は右部分に賃借権を有すると称して占有しているから、これが明渡しを求める。

被告らの主張

当事者参加人の主張する法定地上権の範囲はB宅地のみに限られ、A宅地には及ばない。普通の住宅としてはB宅地をもつて法定地上権の範囲とすべきである。また、法定地上権取得につき登記がないから、被告飛田以外の被告には当事者参加人は対抗できない。

裁判所の判断

一、法定地上権の範囲について。

建物について抵当権を設定した債務者は、右建物が競売に付される場合には、その建物がなるべく高価に競売されることを欲するものであることは多言を要しないところであるから、右建物の利用価値を定めるには一般競落人が競落した際に考慮するであろう建物の利用価値を基準としなければならない。したがつて、右建物の法定地上権の範囲を考える場合にも、右基準により定めなければならない。かくしてこそ、民法が法定地上権の制度を設けて建物の社会経済上の利用価値を保護しようとした公益的目的を達することができるのである。

以上の見解にたつて証拠を綜合し、右土塀は本件家屋建設と同時に本件家屋に接続して築造されたものであること、土塀の北側部分には庭木や庭石があつて本件家屋の庭園をなし、B宅地と合体して同一邸宅を構成しており、右庭園部分は本件家屋の敷地部分と比較して不相当に広大なものではなく、もしB宅地との境界に普通の高さの塀を設置するときは本件家屋の南側と東側の採光、通風が妨げられ、住宅としての利用価値は著しく減じ、被告飛田の所有当時においても庭として使用していたという事実を認定し、法定地上権の範囲は、B宅地のみならず土塀の北側部分全部に及ぶものとした。

二、法定地上権の対抗力について。

脱退原告が法定地上権の取得について登記を経なくとも、土地所有者である被告飛田に対抗できることは論なく、またこれを譲受けた当事者参加人も被告飛田に対抗できる。しかし、被告らのいうように、法定地上権者が、その登記前に土地所有者により第三者に対しその土地に重ねて地上権を設定した場合は、当該第三者に対し対抗できないものとすると、民法三八八条が地上権の設定を強制するのは、競落建物の収去崩壊を防いでこれを保護し、社会経済上の不利益を防止しようという公益上の理由をもつているに拘らず、その所期の効果を失わしめることになるから、競落許可決定確定後なされた地上権設定契約は無効である。

争点について以上のような判断をなした上当事者参加人の請求を全部認容した。

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